当研究は、農民や庶民日記のうち、歴史研究の対象として充分な史料的内容をもつものについて、(1)まだ活字化されていないが主要な日記を、収集し、解読し、全文テキスト化すること、(2)既刊日記史料の原本に遡り史料価値について検討すること、(3)全文テキスト化した日記の利用・研究方法を検討すること、を課題としている。今年度は昨年にひきつづき研究を進めたが、とくに日記史料の現在における刊行状況の把握に努め、あらためて、注目すべき日記史料の存在を確認し、調査・収集・解読・割付・入力という作業を行ってきた。まず、駿河国駿東郡山之尻村(御殿場市)名主滝口家日記について、入力分と劣化が進んでいる原本との対比検討を行う。昨年解読をはじめた三河国設楽郡稲橋村(愛知県北設楽郡稲武町)名主古橋家日記について、文久三、慶応元から四年までを区切ってデジカメによる収集を行い解読をすすめ、解読したものは入力を済ませた。引き続き明治二年以降が残されている。武蔵国多摩郡連光寺村(多摩市)名主富沢家日記については、すでに入力済の10年分に加えて天保14年、安政2〜6年、明治3年分を入力した。新たに、伊勢国飯野郡射沢村(三重県松阪市)豪商竹川竹斎日記を検討し、入力用に割付し外注して全文テキスト版を作成した。この他、秋田県公文書館蔵の門屋養安日記32冊、長野県東筑摩郡麻績村公民館蔵の葦沢家日記95冊、名古屋市立鶴舞中央図書館蔵の山田千畴日記などの原日記を調査検討してきた。今年度は、収集・入力・原日記調査に重点をおいたので、入力済みの全文テキストからの情報抽出の作業は次年度に行うこととした。
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