当研究は、農民日記や庶民日記のうち、歴史研究の対象として充分な史料的内容をもつものについて、(1)主要で良質な日記について、記述年度中心のデータベースの作成(2)まだ活字化されていない日記を、収集し、解読し、全文テキスト化すること(3)既刊日記史料の原本に遡り史料価値について検討すること(4)全文テキスト化した日記の利用・研究方法を検討することを課題とし、まず、いくつかの良質な日記史料を抽出するために農民および庶民の日記史料の現在における刊行状況の把握に努め、改めて注目すべき日記史料の存在を確認し、データ整理を行った。これには、新しく良質の日記の存在が判明すると、その都度データを加えてきた。そのつぎに、所在を確認した注目すべき日記史料について、調査を行い、現地で時間の許す限り解読・筆記をして、解読・筆記ができない分はデジカメやフィルム撮影をしてきた。日常的に解読・筆記を行って原稿として蓄積し、あるていどの蓄積ができると、割付し入力(多くは外注による)を行った。入力した日記は7点(内2点は未完)、そして、まだ不十分であるが、外注で入力分の全文テキストの校正も行いつつある。なお、「研究成果報告書」の一部に所載したように、データ整理した日記は15に及ぶ。当研究は、当該日記研究の研究状況に規定され、日記史料に関する史料情報の収集と調査、中身の豊かな日記史料の解読と入力による全文テキストの作成、に比重をかけざるを得なかったが、研究成果としては、「農民日記の世界」「幕末維新期の日記史料研究」の2論文と、二つの口頭発表をすることが出来た。
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