明治期における近代化をどのような時点で捉えて、比較研究するのかといった点について効果的に分析する必要性を痛感していたので、ほぼ全国的に近代的な商業新聞が登場する明治20年以降の地方新聞から抽出検討することにした。これらの検討課題を基に本年度は、公文書の調査を中心におこなった。調査予定地域の公文書資料、図書平成15年度から16年度に調査を地域としては、北海道立公文書館、北海道大学付属図書館、函館市立図書館、秋田県公文書館、宮城県公文書館、東京都公文書館、長野県歴史館、愛知県公文書館、岐阜県歴史資料館、和歌山県公文書館、鳥取県公文書館、島根県立図書館、愛媛県立図書館、徳島県公文書館、大分県立図書館、大分県公文書館、宮崎県文書センター、沖縄県公文書館、琉球大学付属図書館などの各地の大学・県立・市立の図書館及び公文書館等の調査をおこなった。 これまでの調査では、明治初期の短期間に、職人に対する呼称及び、身分的地位が、地域間においてかなりの格差が生じていた。また、職分化が複雑化し、近代産業へと転換できた職人層は、職工へと変容することにより近代工業の担い手として珍重された。その反面で、伝統的な生活用具の制作者である職人は、経済制度の変化や、自由化によってこれまでの流通経路が崩壊し自立を求められた。政府による施策は小手先だけのものでしかなく、抜本的改善は生活者に任された。そのことが、次第に工業製品の拡がりをもたせることとなり、零細者の生活の糧を失うこととなった。こうした一方で、自由な商売が職住環境を変化させ、家族単位の職住一体化が営まれる状況をつくりあげた。 特にこの調査によって、各地域の商業実態と、職人、職工の存立基盤及び伝統産業におけるその役割について分析することができた。
|