本年度に於いては、当初の計画どおり、第一に張謇の著作である『張謇全集』および『張季氏九録』の読解を進めた。その結果、張謇の「村落主義」の時系列的変遷を詳細に跡づけることができた。なお、著作の読解に関しては、若干の消化未了の部分があるので、次年度に於いて消化したい。また、新聞史料(『申報』など)の閲読を進めた結果、上記史料に未収録のものも確認できた。 第二には、史料収集である。科研費を利用して北京・上海に於いて関連資料を収集した。とりわけ、張謇が晩年に結成した結社である「蘇社」の文献を入手し得たのは、大きな成果だった。また、『江蘇省公報』の閲読を進め、必要とする期間の四分の三ほどの閲覧を終えた。さらに、張謇の郷里南通に於いて史料調査・収集を行った。研究遂行のために不可欠な史料の存在が確認できたので、次年度においても精力的な収集を心がけたい。 第三には、韓国における研究の翻訳である。現在、翻訳作業はほぼ終了し、校閲作業段階に到っている。次年度に於いては、その成果を発表することが可能である。 第四に、『時報』の創刊(1904年6月〜1909年10月)までを購入し、閲読を進めた。現在、購入した部分の三分の一ほど閲覧を終えた。これにより、張謇の初期における立憲活動の軌跡を跡づけることが可能となりそうである。次年度に於いても、引き続き、閲読に努めたい。
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