研究概要 |
今年度は前年度からの継続作業が主であり,その作業内容は二つに分けられる。一つはこれまで収集してきた13〜15世紀の刻文のテキストを地域別・年代別に整理し,各刻文の訳出・解題を進めた。同時に,当該期ラージャスターン,グジャラートの全刻文リストを作成するために,Annual Report on Indian Epigraphyやその他刊行されている様々な刻文リストから当該刻文を抽出し,データベースソフトに入力,整理した。およそ全リストの半分以上は整理したと思われる。 もう一つは12月から1月のおよそ1ヶ月間ラージャスターン州に入り,およそ150点の刻文の撮影(約800枚)を行った。昨年度はもっぱら博物館所蔵の刻文を撮影したが,今回は博物館よりも,ヒンドゥー寺院,ジャイナ寺院や城塞にのこされている刻文を中心に撮影を行った。そのため,昨年に比較して多くの未刊行刻文の写真を収集できた。ただし,そのほとんどは摩滅しており,画像処理でも解読の難しいものが多かった。とはいえ,未刊行史料がデジタル画像データとして収集された意義は大きい。これらのテキスト化は,次年度の作業となる。 また,当該期の直前の時代のラージプートの国家構造について英文論文を作成し,それが『南アジア研究』に掲載された。さらに当該期の在地社会に関する研究として,これまで収集してきた刻文史料をもとに,地方都市の行政組織と社会団体に関する論考の準備を進めた。これは次年度に公表する予定である。
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