本年度は、4年間に及ぶ今回の研究の最終年度に当たるため、さしあたっての一区切りを付けることができるよう、まとめを意図して研究を実施した。 まず、民族別の法典に関しては、既に『大清律例』、「回民専条」、「蒙古例」、『欽定八旗則例』、『回疆則例』、「西蔵通制」が手元にそろったが、『欽定中枢政考』、『欽定兵部処分則例』等、八旗関係の法典は、結局マイクロフィルムが高価なために入手することができず、とりあえず今回は、八旗と満洲族のみを考察対象からはずし、初期の『欽定八旗則例』のみを対象に入れることとした。 法典収集と同時進行で検討してきた各藩部地域における具体的な法制史の研究整理は、昨年度末に一応完了し、既に発表した。その結論としては、やはり中国本土に関する法制史の研究がずば抜けていて、モンゴルに関する法制史研究がそれに次いでいることがあげられる。それ以外は、新疆の法制史に関して、佐口透氏の研究があるのみで、チベットに関しては実質上、研究がないに等しい。 次いで、今年度初めに外モンゴルでの刑事裁判に関する追加研究を発表し、蒙古例の法的効力が旗内の軽微な案件でも確実に存在したという自説を補強できた。また今年度、民族別の法制史の代表例として清代モンゴルを中心とするモンゴル民族の法制史を通史の形でまとめるという研究を完了した。まもなく単行本の中の一論文として出版される予定である。 また本年度末には、本研究の中心テーマである清代の民族別諸法典の比較研究に、上記の諸研究とモンゴルでの裁判文書の訳註を付け加えた研究成果報告書を提出する予定である。
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