研究課題
基盤研究(C)
この科研の研究目標は、清王朝による民族別の諸法典、『大清律例』、「回民専条」、「蒙古例」、『欽定八旗則例』、『回疆則例』、「西蔵通制」等を比較検討し、モンゴルを中心に各藩部地域の法制史研究を整理して、清朝の構造を検証することであった。それに答える本報告書は、第一部研究篇(全一章)と第二部訳註篇(全五章)からなる。以下に結論を述べる。モンゴル民族史上の清朝支配時代は、モンゴルの伝統や現今の政治状況が形成される重要な時代であり、法制史の実態を明らかにし得る最初の時代でもある。清朝の国家構造の面から見た場合、中国本土に比して藩部の法制史研究がやはり圧倒的に不足している。上記の諸法典を比較してみると、特に『回疆則例』と「西蔵通制」の法的効力に大きな疑念が出てくるが、司法支配の実地研究がほとんどない。従って、モンゴルや八旗の旗人、回民に対する法制史研究は、それらに大きな刺激を与え得る。清代モンゴル法制史研究は永らく法典研究が中心であったが、これは、外国人研究者の裁判文書閲覧が困難であったこと、モンゴル人や中国人の研究者に法制史的視点が欠落していたこと、欧米の研究者たちが文献学的文書研究に埋没して、清朝や中国法制史への広い視野を持てなかったこと等による。しかし今後のモンゴル法制史には、清朝全体をも俯瞰する視点や、中国本土での法制史と比較検討する姿勢が必ず必要となる。今後は、諸藩部を単にひとくくりにせず、各地域に何らかの濃淡や機能分担、意味づけの違いを求めるような議論が必要である。最後に、報告書の第二部にて文書の訳註を大量に例示したことは、筆者がモンゴルの裁判制度研究にこれらの文書原本を使用しており、裁判文書の書式や独特のモンゴル語・満洲語表現をも研究目標としているためであるが、社会史や人類学等、法制史以外の方面でもまた充分な価値を発揮できる可能性があろう。
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すべて 雑誌論文 (12件)
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