本年度は、まず申請テーマに関する基本的文献を再度リストアップした後、網羅的に蒐集しようと努めた。それらは、日本にあって蒐集したアラビア語、欧米語文献や、現地エジプトで購入したアラビア語資料、さらにカイロのエジプト国立図書館(Dar al-Kutub)、同アラブ連盟大学写本研究所などで閲覧・複写した貴重なアラビア語写本、文書類を含むものである。 その上で、エジプトの広大な墓地区「死者の街」に埋葬された人々のデータベースの作成に取りかかった。最初に、基本となるシートの項目を選択し、その枠を設定した。それらは被葬者氏名(尊称、通り名、性別、生没年など)、家系全般の情報(結婚歴、家族情報)、身体的特徴、職業、空間移動(生没地を含む)、学識に関する情報(法学派、神学派、師弟、学歴、著作、所属教団など)、墓に関する情報(位置、形状・素材、参詣慣行、祈願内容)、カラーマ(奇蹟/美質縹)、事蹟と逸話、出典元などから構成することとした。 また当初、アラビア語と他言語との併用環境に秀でていることから、マッキントッシュ社のパソコンによりファイルメーカー・プロのソフトを使用すべく構想していたが、その後、WindowsもXPの登場によりアラビア語使用状況が変化し、地図・図表などと連動した加工の可能性が増した。そのため、試行錯誤の末、Windowsによって、Word、Excell、Accessのソフトを連動させる方向へと転換した。すでに百点以上のシートに入力を行っている。 さらに昨年12月〜本年1月、現地エジプトの「死者の街」においてフィールドワークを行い、史料上に示された墓と参詣順路を実地に踏査した。今回は、12世紀の参詣手引書(Murshid al-Zuwwar)に従って参詣したが、大きな環境変化を被っていることを具体的に跡づけられた。加えて、調査の過程で、墓掘人や墓管理者、墓地居住者らからも聞き取り調査することが出来た。
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