本報告書は論考<清代の琉球漂着民送還体制>とデータベース<清代琉球一般船漂着一覧>の2部構成とした。論考では、清代の琉球漂着民に対する送還システムの構造について、「漂流・漂着」の実態や時代背景、漂着に対する「訳訊」といった取り調べ、「修船」の費用や「変売」といった貨物の売却、「護送」に関わる諸問題、沿岸各省の賞賚品目、福州における「加賞」としての賞賚品の賞給量および賞給方法、そして福州における行政文書の収発経路などについて検討した。 データベースの<清代琉球一般船漂着一覧>では「西暦」「中国年」「王代」「出発地」「目的地」「漂着地」「漂着月日」「漂着者」「漂着者の確認方法」「船舶所属」「装載貨物」「航海理由」「護送経過」「乗員」「死亡」「撫恤・加賞」「変売・修船」「帰国方法」「備考」いったデータ項目を設定して、漂着の実態を解明しうるデータベースを作成した。 論考はこれまで発表した拙稿「清代の琉球漂流民送還体制について-乾隆二十五年の山陽西表船の漂流事例を中心に」(『東洋史研究』第五八巻第三号、一九九九年)、拙稿「清代の琉球漂流民に対する賞賚品目について」(『日本東洋文化論争』第六号、二〇〇〇年)、拙稿「清乾隆期中国対琉球遭風難民的撫恤及遣送制度」(陳捷先教授古稀記念論文集『文献與史学』、遠流出版、2002年)及び2003年10月に「第7回琉球中国交渉史に関するシンポジウム」で発表した「清代福州における琉球漂着流民の撫恤について」加賞を中心に」を総括的に整理したものである。
|