本年度は昨年度の米国とフィリピンでの調査で収集した資料の整理、分析を行うとともに、9月に米国議会図書館古文書部(ワシントンDC地区)、NARA文書館(メリーランド州)で、米国の南部フィリピン・ムスリム地域の植民地統治に関する資料資料の閲覧、収集を行った。主に利用した資料はレナード・ウッド文書、ジョン・パーシング文書、米国陸軍省島嶼局文書である。これらの中にはムスリム指導者の植民地政府に対する各種請願、米国人植民地行政官の日記、植民地統治開始当初のムスリム平定作戦の記録などがある。請願や手紙の中には、ジャウィで記されたものもあった。 また、1910年代にサンボアンガ市で発行されていた英語・タウスグ語の地方紙「スールー・ニュース」(タウスグ語はジャウィ表記)、1930年代にダンサラン市で発行されていた英語・マラナオ語・セブアノ語の地方紙「ラナオ・プログレス」の複製を入手した。 フィリピンのイスラーム運動研究の専門家であるサムエル・タン氏、マイケル・マスツラ氏と面会し、研究状況や研究方法について助言を得たり、意見交換を行った。また、マラナオのウラマーであるウスマン・イマーム氏の協力を得て、米国統治期にマラナオのウラマーが書いた請願などの文書の翻字・翻訳を行った。 現代のイスラーム運動については、現地新聞・雑誌、団体機関紙、および、現地のムスリム大学教員、イスラーム団体関係者、イスラーム知識人へのインタビューによってデータを収集し、イスラーム関係団体や運動のリスト、および、年表を作成した。
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