本年度は4年計画の第1年目として、課題とする研究を進める一方で、基本となる史料の収集に努めた。その成果は以下の通りである。(1)民間宗教結社の研究としては、明代の北京の西の郊外の保明寺を根拠地とする西大乗教の教義とその展開を研究中である。この論文は平成14年中に完成する予定である。(2)民間宗教の経典たる宝巻の形成過程の研究。特に『金剛科儀』と羅教の宝巻をはじめとする後代の諸宝巻との関係を考察し、そこに見られる教義上と形式上の継承関係を明らかにしつつある。(3)本年度において収集した主な宝巻は、羅教の『仏説三皇初分天地嘆世宝巻』、西大乗教の『銷釈大乗宝巻』『銷釈顕性宝巻』『西王聖母諸仙慶賀蟠桃宝巻』『仏説大慈至聖九蓮菩薩化身度世尊経』、黄天道の『虎眼禅師遺留唱経巻』『仏説普静如来鑰匙宝懺』等であり、いずれも民間宗教研究に貴重な史料である。(4)民間宗教結社と王朝権力との関係、その社会的存在形態についてはまだ研究が進んでいない。ただし、その基本史料となる『清代秘密結社档案輯録』を購入したので、今後この史料を中心に研究を進めたい。(5)当初の計画では、海外共同研究者である中国の馬西沙・韓秉方両氏が来日して、共同研究会を開く予定であったが、馬氏の家族の病気により、来日できなくなった。代わりに浅井が訪中し、北京で研究会を開いた。浅井は西大乗教について、馬西沙氏は道教と民間宗教について、韓秉方氏は民間宗教と民俗について話しをした。また、西大乗教の保明寺の遺跡を調査し、写真を撮った。 以上の研究についての論文はいまだ作成中であり、平成14年度もしくは15年度に学会誌等に発表するが、最終的には単行本として刊行する予定である。
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