研究課題
基盤研究(C)
本研究は中国の明清時代、華北における大乗教系民間宗教の成立と展開に焦点を当てて研究した。大乗教系民間宗教とは、西大乗教・東大乗教・大乗円頓教を指す。なぜこれらの教派を研究の対象にした理由は、大乗教系民間宗教が、明清時代の民間宗教結社の中心的教派であり、しかもこれらの教派によって代表的宝巻経典が作成されているからである。大乗教系民間宗教を研究することにより、明清時代の民間宗教の形成と展開の重要部分を明らかにすることができるからである。4年間にわたる研究の結果、初期の目的を達成する見通しがつき、研究書を作成し刊行する計画が進捗している。研究内容を要約すれば次のようになる。まず、明代天順年間(1457〜1464)に創建された勅賜順天保明寺は普通の尼寺ではなく、尼姑の呂〓を教主とする民間宗教的性格を有していた。この保明寺の中から民間宗教西大乗教が形成されていく。西大乗教はやがて15世紀末から16世紀初に成立した羅教の教義や弥勒下生信仰などを入れ、やがて万暦年間(1573〜1620)には、新たに帰円という尼姑により、経典宝巻である西大乗教五部六冊を刊行した。一方、羅教の教義と弥勒下生信仰とが結びついた東大乗教(聞香教)が万暦年間に成立し、この教派は官憲の弾圧を受けるが、天啓2年(1622)に山東省・河北省を中心に明代最大の宗教的民衆叛乱を引き起こす。東大乗教徒の反乱が平定された後、その教徒弓長は天啓4年に大乗円頓教を立て、末劫の災難に苦しむ衆生を救済することを唱えた。大乗円頓教の3つの重要な宝巻は、西大乗教から東大乗教・大乗円頓教に至る歴史と、この間の教義の形成過程を明らかにしている。大乗教系教派の特徴は、(1)阿弥陀浄土信仰を基礎に置いている、(2)弥勒下生信仰を説いている、(3)無生父母信仰で全体をまとめている、(4)内丹法による修煉をおこなう、(5)男女を含む民衆を組織している、ということである。これらの諸特徴の内容、その歴史的形成過程を論じた。大乗教系三教派は互いに密接な相互関連の中で形成されたことを明らかにした。
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東方学 111輯
ページ: 107-122
TOHOGAKU (Eastern Studies) NO.105
(結社の世界史2)『結社が描く中国近現代』山川出版社
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The bulletin of the Faculty of Letters (Tokai University) NO.81
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The history of modern and present China drawing by secret society. (Yamakawa shuppansha)
東海大学紀要・文学部 第81輯
「明代史研究会創立三十五年記念論集」汲古書院
ページ: 479-491
Essays of Ming history for the 35th anniversary of the foundation of the society of Ming history. (Kyukoshoin press)