古来、中国では多くの農書が編纂されてきた。とくに、北魏の賈思〓著『斉民要術』と元の王禎著『農書』は、中国農書の双璧である。後者の『王禎農書』は、中国南北地方の農法について詳細に解説を加えているばかりでなく、また多くの伝統的農具の使用法と挿絵をも掲載しており、本書は中国科学技術史の重要史料の1つとなっている。『王禎農書』の原テキストは現存しないが、われわれが見ることができるのは、後世のいくつかの版本と写本である。農具の挿絵は、各テキストによって異なり、この問題が読者を非常に困惑させてきた。『王禎農書』を正しく理解するために、われわれはテキストの厳密な校訂作業と、伝統的農具に関する豊富な知識を必要とする。当該研究では、文献考証とフィールドワークの経験を併用し、中国農業技術史研究のために新しい方向性を示すことに努めた。
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