本研究の目的は、オスマン帝国末期のスルタン、アブドゥルハミド2世(在位1876-1909)の近代化政策について考察するものである。現在の研究における評価は、様々であり、イスラム主義者とされる一方、近代化推進者としての評価もされる。アブドゥルハミド2世が西欧諸列強のオスマン帝国に対する植民地化、分割侵略政策に対抗して、諸外国のオスマン帝国に対する攻勢をを天秤に懸けて、バランスを取りながら対応したことも高く評価されている。 このようなオスマン帝国末期の状態を解明するために、アブドゥルハミド2世について考察する。これによって、オスマン帝国の「近代」について、さらにトルコ共和国の「近代化」の問題について明らかにすることができる。 このため、アブドゥルハミド2世の点について明らかにする。 1)教育面などにあらわれる西欧化の実態 2)オスマン主義とイスラム主義への対応 3)外交における天秤政策の展開 今年度は、トルコ共和国内のアブドゥルハミド2世の史料調査を行った。イスタンブルの総理府公文書館オスマン語史料部において、アブドゥルハミド2世の居所であったユルドゥズ宮殿のオスマン語文書類を中心に、大宰相府、ルメリー3州総督府文書などを閲覧、複写した。また、アンカラの総理府公文書局において共和国史料の調査も行った。これらのオスマン語文書を、原文のアラビア文字と、現代トルコ語のラテン文字化したものを入力し今後の研究の史料として保存した。
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