本年度は研究期間の二年目として、四川の彝族をめぐる漢族との民族関係史を中心に考察を進めた。とくに前半は台湾で収集した軍機處档案に対する整理と読解の作業を進め、その成果を250頁近くからなる史料集という形でまとめた。またこの史料をもとに、この地区における民族関係の歴史を分析し、論文「十九世紀前半の四川彝族地区における民族関係とそのイメージ--台湾故宮博物院所蔵の档案史料を中心とする分析」をまとめた。また九月に同名の研究報告を国立民族学博物館における科研研究会(共同研究「中国における民族表象の人類学的・歴史学的研究--南部地域を中心とした整理と分析」、研究代表者、長谷川清)において行った。 一方辺境における民間宗教の問題については、湖南における青蓮教の活動に重点をおいて分析を進めた。とくに1847年の新寧県雷再浩反乱については、台湾で収集した軍機處档案をすべて読解して活字に起こし、現在ほぼ内容の校訂を終えた。また初年度に重点を置いた台湾張丙反乱と分類械闘については、三月に論文「太平天国前夜の台湾における反乱と社会変容」を共著として刊行した。さらに次年度の重点として取り上げる予定の捻子については、各種史料の分類、整理作業を終えた。四月以降に本格的に史料の読解作業を進める予定である。
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