本年度は1840年代の史料に関する分析に行なった。とくに中国内地の経済的辺境である安徽、河南の捻子にスポットを当て、彼らと四川白蓮教反乱との関係について検討した。また1830年代の経済不況によって捻子の勢力が急速に拡大した事実を確認したが、草書体の档案史料が想像以上に多かったために整理作業は完了しなかった。 本年度はSARSの影響で夏休みの中国訪問を断念せざるを得ず、代わって日本国内所蔵の地方志、台湾の故宮博物院で収集した宮中梢案を読み進めた。また中国辺境における民族関係史を解明する一階梯として、費孝通『中華民族多元一体格局』(邦訳は『費孝通の中華民族論』風響社、二〇〇四)の共同翻訳を行なった。担当部分は賈敬顔「漢人をめぐる考察」「歴史における少数民族内の漢族的要素」の二論文で、この作業により西北辺境の民族関係史について多くの教示を得ることが出来た。
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