本年度はまず19世紀の辺境各省で盛んな活動を見せた民間宗教、とくに青蓮教の活動について分析を進めた。その布教活動を担った商人たちの動向については、嘉慶年間に北京で摘発された江西商人を例に実態を解明した。また道光年間に発生した青蓮教弾圧の経緯を跡づけ、それが拝上帝会に対する有力移民の告発の背景にあることを検討した。 一方本年度は19世紀広西の社会変容について、京控事件に関する档案史料をもとに分析を進めた。その結果当時の広西地方政府は成長しつつあった新興勢力を保護せず、彼らに一定の政治的役割を与えることで地方統治を補完させるだけの柔軟さを欠いていた。その結果政治的成功を収めた科挙エリートと非エリート間の断絶が深まり、結果として太平天国の発生を招いたことが確認された。 さらに本年度は太平天国の軍事行動のうち、1853年の北伐に関する研究を行った。同時に19世紀前半の捻子と河南一帯の抗糧暴動に関する史料の整理と分析を進めた。
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