三年計画プロジェクトの二年目として、研究史料の調査・収集を継続することに加えて、新疆でのフィールドワーク調査を行った。また、本課題のテーマ別研究に着手し、その内容を複数の学会で発表し、一部を論文化した。 (1)昨年に引き続き中国第一歴史档案館(北京市)で文書史料の調査を行い、従来着手していた「軍機処満文録副」に加えて、新たに「軍機処満文月折档」、「乾隆朝軍機処随手登記档」なども調査し、閲覧の上一部を複写した。また、当館満文部呉元豊主任(部長)、張莉館員に目録分類の状況、档案整理の最新情報についてヒアリングした。 (2)学会発表については、A.第39回野尻湖クリルタイ(日本アルタイ学会)にて「档案史料でみる清代新疆の回民(中国ムスリム)たち-とくに乾隆期(1760年代以降)の場合-」をテーマに発表(2002年7月22日)B.国際清史学術討論会(中国・大連市)にて「乾隆年間陝甘回民向新疆的遷移与清政府の態度」をテーマに発表(2002年8月14日)C.本学少数民族研究会月例会にて「中国ムスリム(回民)の新疆移住史を検証して-18世紀(清乾隆期)の事例を中心に-」をテーマに発表(2002年12月10日) (3)フィールドワークについて、天山南路のカシュガル(喀什)とヤルカンド(莎車)および天山北路の烏魯木斉、米泉、昌吉にて行い、カシュガルとヤルカンドでは旧市街地を中心に清代生活・商業区の旧跡を訪ね、現在在住の回民にヒアリングした。烏魯木斉・米泉・昌吉では各回民居住区を訪問、清真寺、回民商店、集会場を重点に調査した。新疆社会科学院の協力を得て、現地の回民問題研究者多数と対談することができた。 (4)論文執筆に着手。「清代甘粛・陝西回民の新疆進出-乾隆朝の事例を中心に-」(塚田誠之編『民族の移動と文化の動態-中国周縁地域の歴史と現在』に収載、風響社、2003年3月)には最新の調査結果を加えて補足することができた。なお「清代における玉石交易と新疆社会」をテーマに現在執筆中。
|