プロジェクトの最終年度にあたり、研究の深化とまとめに向けて、種々の作業を継続的に行った。 1)従来調査している北京の中国第一歴史档案館に加えて、台北の国立故宮博物院文献図書館を訪問し、関連史料の調査を実施した。その結果、当所所蔵の軍機処奏摺類から複数の新出史料が発見され、大陸と台湾所蔵の清代档案が相互に補えることを改めて確認できた。なお今回の調査により、台湾方面の档案文書データベース化の状況を把握でき、現在、台北の軍機処奏摺類をウェブ上購読の方式でひきつづき利用している。 2)これまでに入手できた上記の史料群をひきつづき読解・翻訳(満洲語から日本語)するとともに、リスト化・データ入力の作業を行い、整理の作業をおこなった。満洲語の部分に関しては、中国第一歴史档案館満文部スタッフの協力を得て進めた。 3)回民移住の一般状況から清代回民社会の変容と権力側の対応へと研究の重点を移し、とりわけ乾隆後期甘粛回民の反乱をめぐる社会的状況、清政府の回民に対する政策の変化について追究を試みた。その成果を次の場で発表した。(1)中国ムスリム研究会第5回定例会(2003年7月26日、東京)にて、テーマは「「乾隆期甘粛回民の反乱と新疆」。(2)第一届清史学術研討会(2003年10月27日-29日、台湾・宜蘭)にて、テーマは「乾隆年間甘粛新教回民起義後清政府対新疆回民政策の変化」。 4)新疆における回民移住者社会の構築とそのメカニズムの解明にも着手。回民移住者と現地社会との関係に注目点を置いてる。論文「清代における玉石交易と新疆社会」のなかで、回民商人のあり方について言及し、その典型例として陝西省渭南県出身の回民商人趙鈞瑞の事例を詳細に分析した。
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