(1)研究ソースの開拓と史料群の整理・解読 北京では中国第一歴史档案館、台北では国立故宮博物院図書文献処、日本では東洋文庫、天理図書館を中心に関連資料の調査と収集を継続的に実施し、数百点にのぼる新出史料を発見した。その大半が清朝の公文書-档案類であり、とりわけ「軍機処録副奏摺」中の満・漢文文書が重要な史料価値を有していることを判明した。なお膨大な史料群に対して、逐次に公表することを念頭に分類整理・リスト化および満文史料の訳読を行なってきた。 (2)清代回民の新疆移住へのプロセスを全面的解明 従来では断片的な言及にとどまっていた回民の移住活動の展開を、時代の背景、移出先と移動の大勢・段階性、移住後の分布と定着状況などの側面から追究して、その様相を明らかにした。档案から得た100以上の移住事例に基づいた実証的な分析により、上記の過程が具体化され、移住活動の多様性が再現される一方で、回民というエスニック集団の特色も浮き彫りになった。 (3)清朝の回民統治策と新疆回民社会への影響に関する研究 乾隆期後半に甘粛省で二度発生した新教回民反乱への弾圧と清朝の在新疆回民への支配強化に焦点をあて、回民の移住と清朝権力側の政策との関連について検証した。新教弾圧に連動した在新疆回民の境遇変化を詳細に跡付けた一方、同地で構築された回民移住者社会のあり方、ことにそのイスラム的性格についても明白に提示した。
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