今年度の研究計画では、15〜17世紀の帝国議会の最終決定の整理を行うことであり、そのためにドイツ・ゲッティンゲン大学に行き、史料の収集および研究遂行のための助言を受けた。その際特に、帝国議会で行われた帝国最高法院に関する諸決定および査察活動に注目して、基本的史料の収集および項目別の整理を行った。1495年の帝国最高法院の創設時の帝国最高法院令、1555年の帝国最高法院令の整理、1648年のヴェストファーレン条約の該当個所の整理を行うとともに、16世紀末からの宗派の問題に対する帝国議会および帝国代表者会議の権限の問題を整理した。また18世紀の帝国議会で企てられた帝国最高法院の査察委員会の史料収集し、情報を整理した。このような帝国議会の問題とともに、帝国最高法院の問題をより一層理解するために、近年発表された帝国最高法院に関する研究書を読み、その中でも特に帝国最高法院の訴訟記録を統計学的手法を用いた研究に着目した。これにより1495年から1806年の帝国の崩壊までのおよそ300年の期間の帝国最高法院の活動を数量的に把握することが可能となり、年代毎の訴訟件数の推移、訴訟の地域的分布状況、訴訟内容の変化を長期にわたって考察することが可能となった。ここから得られた情報は、15〜18世紀の神聖ローマ帝国の政治構造を考察するという本研究の目的にとって、大変に有益なものであり、現在この帝国最高法院の活動に関しての論文を準備中である。
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