今年度の研究計画に従って、昨年度から引き続いて行っている15〜17世紀の帝国議会最終決定議事録の項目別整理作業を行った。また、昨年度から取り組んでいる郵便問題に関する基礎的な情報整理を行うとともに、帝国議会における郵便レガリアの問題を整理した。また特に本年度は、17世紀以降の領邦レベルでの郵便制度の展開と帝国郵便の関係に重点を置いた作業を行った。取り上げた領邦としては、ブランデンブルク・ブラウンシュヴァイク・ザクセン・オーストリア・ザルツブルク・ヘッセン・ミュンスター・バイエルン・ヴュルテンベルク・プファルツ・マインツ・トリアー・ケルン・帝国都市フランクフルトとケルンである。これらの地域での郵便制度の実態を整理するとともに、帝国郵便との関係で3つの類型(自立型・共存型・依存型)に整理することが可能であることが判明した。自立型は、上記のブランデンブルクからザルツブルクまでが当てはまり、領邦独自の郵便制度を確立し、帝国郵便と業務提携を結び、領邦内における郵便事業の独占を確保するとともに、一定の地点で帝国郵便と郵便物の交換を実現し、帝国郵便がルート上、領邦内を通過する場合には、領邦内での一切の郵便事業を禁じていた。第2の共存型には、ヘッセン・ミュンスターが当てはまり、帝国郵便が領内を通過し、郵便事業を行うことを認めるとともに、領邦君主によって特権を与えられた郵便事業者あるいは都市飛脚も郵便事業を行っていた。第3の依存型には、バイエルン以下が当てはまり、領内の郵便事業を帝国郵便に依存し、領邦君主は帝国郵便長官と事業提携を結んでいた。この型には、一時的には独自の領邦郵便を持った、あるいは模索し失敗した地域を含めて考えている。現在は、このような分類をさらに詳細に検討するとともに、それぞれの型の帝国との関わりの具体的な一面を明らかにすることを行っている。
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