研究課題
今年度の研究計画に従って、昨年度から引き続き行っている15〜17世紀の帝国議会最終決定議事録の項目別の整理を行った。また、昨年度から継続している郵便問題に関する基本的な情報の整理を行い、帝国郵便に関しては論文「近世ドイツにおける帝国郵便」を発表した。昨年度から取り組んでいる領邦郵便に関しても、現在論文を作成しており、次年度に発表する予定である。この帝国郵便と領邦郵便の両者の考察により、近世ドイツにおいて、重要な国家的な事業が、実際にどのように展開されたのかを把握することができ、この当時の神聖ローマ帝国の政治構造を具体的に分析することができた。郵便という16世紀に現れた新規の国家的な事業を対象としたことで、この当時の帝国において、実際に皇帝、帝国機関、領邦がどのような関係を持っていたのかを具体的に把握することができた。本年度はまた、この郵便の問題とともに、帝国の中で重要な役割を果たした聖界諸侯の位置づけについても検討した。聖界諸侯は、聖堂参事会による選挙によって選ばれ、世俗諸侯のように世襲でその地位が継承されるものではなかった。そのためこの司教選挙に皇帝をはじめ有力な世俗諸侯が重大な関心を持ち、選挙使節を派遣して、これに影響を及ぼそうと努力している。この司教選挙の実態の解明にあたるとともに、帝国政治の中での聖界諸侯の位置づけを考える一つの手段として、聖界諸侯領の大きさといった基礎的なデータの収集から始め、帝国国制の中で役割を検討した。帝国議およびその他の帝国諸集会における位置、帝国クライス内における役割。皇帝との関係については、前述の司教選挙とともに、皇帝が折々に派遣した特別使節への任命状況について検討した。
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ヨーロツパ史におけるアイデンティティ(高田実, 鶴島博和編)
ページ: 147-176