「15〜18世紀神聖ローマ帝国の政治構造の分析」を研究課題とする本研究の目的は、まず第一に、今後の分析のために必要な基礎的なデータを収集し分類および整理すること、第二に、抽象的に描かれがちな神聖ローマ帝国の国制構造をできるだけ具体化して描くこと、の二つであった。第一の目的のために行った作業は二つである。まず一つは15世紀〜18世紀における帝国議会の出席者および議題を整理することである。第二は、聖界諸侯である大司教と司教の選出状況について整理することである。以下の10点について、1448年のウィーン協約以降の全ての大司教と司教(1803年まで帝国直属性保った者、計23の大司教と司教)、延べ人数416名についての調査を行った。(1)名前(2)生没年(3)在職状況(4)出自(5)教皇の承認日(6)叙階日(7)レガリア受領日(8)就任前の皇帝との関係(9)就任後の皇帝との関係(10)帝国政策。第二の目的である政治構造をできるだけ具体化して描くという点に関しては、以下の2点についての主に考察を行った。第一に、郵便問題である。15世紀末に誕生し、16世紀以降ドイツに普及した郵便制度は、国家事業として展開され、帝国と領邦との関係を具体的に考える上で、非常に有益なテーマである。第二は、聖界諸侯の問題である。基礎的なデータの整理の結果を活用して、聖界諸侯が帝国の政治構造の中で、具体的にどのような役割を果たしたのかを検討した。今回の研究は、神聖ローマ帝国の政治構造に関する今後の研究にとって不可欠で、不足している基礎的なデータを収集・整理することに重点がおかれ、この研究期間中に得られた成果は、今後の研究の基本となる。まだ整理な不十分なデータも大量にあり、今後はこのようなデータの整理と、ここから得られる知見を積極的に公表していきたいと考えている。
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