研究概要 |
本研究は1世紀から2世紀後半までの間、ローマ帝国の広大な領域にわたる支配の安定はいかにして可能であったのか、という問題意識から、帝国の支配下に組み入れられていた属州民の心性を、初期キリスト教徒のそれらをも含めて考察し、ローマ帝国の支配のイデオロギー的側面の解明の手がかりとするものである。初年度の実績は次の通りである。 (1)当該時代の心性史研究のための研究文献を関連古典献をも含めて購入し、その分析を開始した。また非文献資料からも手がかりを探るため、考古学分野の重要学術誌Joumal of Roman Arhcaeology及び西洋古代碑文学分野の学術誌Zeitschrift fuer Papyrologieのそれぞれバックナンバーを購入し、検討を開始した。 (2)関連文献のうち、ローマ帝国属州史の研究に着手し、特に小アジア・東方属州の碑文(ガラテア、リュキア、エジプト)と文献資料としてルキアノス、プルタルコスの検討を行った。 (3)8月に連合王国に出張し、ケムブリジのP.Garusey,オクスフォドのB.Levickと研究打ち合わせを行い、ローマ帝国1,2世紀の経済状況について、従来のように一面的な繁栄と活発な遠隔地交易の進展を強調できないこと、ローカルな経済圏の中で属州民の心性を考察すべきことを確認した。またロンドン大学古典研究所においてイタリア、アメリカの研究者と交流し、文献調査を行った。 (4)収集した文献・雑誌の整理・分析を協力者に依頼して行った。
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