1世紀から2世紀後半までの長期に及ぶローマ帝国の、広大な領域にわたる支配は、いかにして可能であったのか、という問題意識から、帝国の支配下に組み入れられていた属州民の心性を、初期キリスト教徒のそれをも含めて考察し、ローマ帝国の安定的な支配のイデオロギー的空気を明らかにすることを目的とした。近年の心性史の研究の展開を受け、ローマ帝国の住民たちの意識に着目し、彼らが実生活のレベルでローマの支配をどう受け止めていたのか、彼らのローマへの親近感はどこまで全属州のローマ支配へのコンセンサスを構成したか、を明らかにすることを第一のアプローチとした。平成14年度の実績は次の通り。 1)当該時代の文献史料及びギリシア・ラテン碑文の新しい校訂文献を購入した。 2)1世紀から2世紀にかけてのローマ帝国属州民の心性検証のケーススタディとして、ガリアを取り上げ、関連資料を、特に従来このような視点で検討されてこなかった初期キリスト教文献の再吟味を行い、「ローマ世界におけるキリスト教受容-二世紀ガリアを中心に-」として宮城学院女子大学キリスト教文化研究所で発表をおこなった。その成果が下記のごとく公刊された。 3)平成14年8月に連合王国に出張し、ロンドン大学古典学研究所において、ケムブリジ大学から来た研究者と、ローマ帝国属州史研究について意見交換し、またオクスフォド大学において平成15年に予定している、東京でのシンポジウムについて打ち合わせを行った。
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