本研究においては英領コモンウェルス成立への歴史的道筋をたどるため、(1)イギリス帝国の重要な濫觴となったハドソン湾における毛皮帝国の形成、(2)1931年のウェストミンスター憲章への具体的経緯の解明につながる植民地=帝国会議の発展、の二つに焦点を絞った。 第一点についてはHudosn's Bay Recod Society及びChamplain Socetyから刊行されているハドソン湾会社、毛皮交易関係の史料集の収集、読解に努め、概説書として山川出版社から『カヌーとビーヴァーの帝国-カナダの毛皮交易-』を刊行した。北米大陸におけるイギリス、フランス、ロシア、スペイン、アメリカなどの諸列強が帝国的版図の拡大を目指したプロセスを明らかにし、同時に他の植民地とは顕著な相違を見せた先住民=白人関係の展開を描き、カナダの毛皮帝国に関する日本で初めての書物となっている。 第二点の英領コモンウェルスを導いた植民地=帝国会議についてはイギリス議会史料British Parliamentary Papersや植民地省文書Colonial Office Papersの収集、読解に努めた。具体的な成果の刊行にはなお時間を要するとはいえ、その一部は近刊の『講座イギリス帝国の20世紀』に含められることになっている。研究代表者は同講座第二巻の編者として「総説・世紀転換期のイギリス帝国」と「植民地=帝国会議の発展-コモンウェルス再編への萌芽」を執筆している。
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