研究概要 |
(1)昨年度末、すなわち3月14日から27日にかけて、ワシントン大学公文書館等で史料調査を行った。帰国後、収集した史料の分析を開始した。南北戦争後の合衆国においては南北宥和の政策手段として太平洋への発展が称揚された。アラスカへの交易中継地として合衆国東部からその存在を認知され始めたシアトル市が、その国策に乗じてアラスカ・ユーコン太平洋博覧会を企画し、アジア太平洋への商業的飛躍を意図していたことが史料で明らかになった。ただ、20世紀初頭の西海岸ではアジア系移民への排斥がすでに始まっており、合衆国政府の展示にもそれらの国内情勢を勘案した「人種」や「領土併合」に関する注意深い表象が凝らされていた。 (2)上記を、8月末に北海道大学で開かれた国際シンポジウジウム「グローバル時代におけるアメリカにゼーションとナショナリズム」において"The United States and the Pacific-Rim World Represented at the Alaska-Yukon-Pacific Exposition in 1909: In Search of a Historical Perspective of Americanization."のタイトルで発表。 3)ドイツの出版社から論文、"Ein Meer Names Daitoyo : Das Konzept des Pazifik aus japanischer Sicht,1660-1860," Das Meer als Kulturelle Kontaktzone, (UVK, 2003)を刊行した。 (4)年度末に再びサンフランシスコ周辺の図書館で行う予定であった史料調査は、病気手術のために本年は断念し、用意した海外出張予算は、備品図書と消耗品に分割して使用。謝金で研究支援者を雇い収集史料と合わせてそれらの図書の整理を行った。
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