今年度は、昨年度に手がけていた初期ケープ植民史における先住民・奴隷・植民者の関係についての研究を発展させるとともに、ナミビアにおける人種関係史の実証研究を行なった。8、9月にナミビア国立文書館を中心に行なった海外調査では、(1)ドイツ統治時代の西南アフリカ・アンゴラ・ベチュアナランド・ローデシア境界領域における人種関係とアフリカ人エスニシティの形成との関連、(2)ナミビア中南部レホボスにおける「混血」社会の形成、の二つのテーマについて史料収集を行なった。 (1)では、今日「カプリヴィ」と総称される社会において、19世紀末から20世紀初頭にかけて、「マスビア」「マフウェ」「マイイェ」「ムブクシュ」などの集団が形成されていく過程と隣接する「ロジ王国」との関係、さらにドイツ・イギリス・ポルトガルの国際関係との絡み合いを分析することを自的とした。主要な史料をほぼ入手することができ、その成果の一部はすでに発表した。今後、未使用の史料の分析を行ない、発展的な研究を発表する予定である。 (2)では、レホボス統治の体制にかんする史料を集めるとともに、先住の「ナマ」とドイツ人・ブール人との婚姻関係の個別事例を収集し、独自の「混血祉会」としての20世紀初頭レホボス社会の構造を分析することを目指した。これについては、必ずしも文献史料が十分ではなく、現時点で研究をまとめるにはなお不足がある。ただし、今回の現地調査で、今後のオーラル史料収集のための聞き取り調査の下準備を行なったので、実際の調査を次年度の課題としたい。
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