(1)まず研究代表者(橋場)は、前5世紀におけるアテナイ民主政の言説中に、賄賂と贈与をめぐる記述が極めて密接に交錯している点を、同時代史料に基づいて明らかにし、それによってポリス成立以前から存在したと思われる伝統的な贈与文化が、古代ギリシア人の行動規範をある程度規定しており、そして民主政における合意形成のプロセスにおいてこの伝統的な規範が両義的に作用したことを解明した。その際、賄賂を犯罪と規定する公職者弾劾制度の進展を一つのメルクマールとした。 以上の研究課題追究の目的で、関連する基礎的史料を網羅的に収集し、コンピュータによって整理した。とくに、ギリシア古典双書として定評のあるLoeb Classical Libraryの購入は極めて有効であった。同時に、国内にある図書、雑誌論文を入手するために、数度にわたって資料収集の目的で国内出張を行った。 それらデータの整理、および新刊図書購入に関する雑務には、必要に応じて日雇者の協力を得た。また平成13年9月には、2週間にわたって、関連する資料の収集および研究打ち合わせのために、ロンドン大学古典学研究所、およびケンブリッジ大学古典学部を訪れ、とくにケンブリッジ大学では古典学部教授R.Osborne、P.Cartledge両氏と意見交換をすることができた。 (2)研究分担者(鈴木)は、古代ギリシアと文化的連続性のつよいバルカン・東欧地域の伝統社会において、政治的合意がどのような社会的価値観の下に成立したのかを、中世ハンガリー国家の成立を舞台として追究した。そのために必要な文献収集を行い、そこから得られるデータを整理するための機器を購入し、使用した。
|