(1)まず研究代表者(鈴木)は、古代ギリシアと文化的連続性のつよいバルカン・東欧地域の伝統社会において、政治的合意がどのような社会的価値観の下に成立したのかを、中世ハンガリー国家の成立を舞台として追究した。とりわけ、15世紀後半にハンガリーでの王権強化に成功したと言われるマーチャーシュ王のイメージが、近代を経て今日に至るまでどのように変容したのかを探究した。そのために必要な文献収集を行い、そこから得られるデータを整理するための機器を購入し、使用した。 (2)次に研究分担者(橋場)は、古典期におけるアテナイ民主政の合意形成にかかわる言説を、法廷弁論とそこに引用される法文とを手がかりに分析し、とくに賄賂と贈与が公的な弁論においてどのように受け取られていったかを探究した。そして合意形成に必要な説得という作業の中に、贈与という要因が伝統的に重要な位置を占めていることを確かめ、その贈与による説得という伝統的価値観が、やがて前5世紀末以降、言葉による説得に取って代わられてゆくプロセスを明らかにした。 以上の研究課題追究の目的で、関連する基礎的史料を網羅的に収集し、コンピュータによって整理した。とくに、関連する最新の欧米文献を多数集めることができたのは有益であった。同時に、国内他大学図書館にある図書、雑誌論文を入手するために、数度にわたって資料収集の目的で国内出張を行った。また、それらデータの整理、および新刊図書購入に関する雑務には、必要に応じて日雇者の協力を得た。
|