ローマがラティウム・カンパーニア地方の政治的統合を完了する前4世紀の後半は、「ノービレース」と呼び慣わされている新しいローマの支配者層の形成が始まる時期でもある。そこで先ずノービレース支配を具体的な研究対象として取り上げ、そのイデオロギー的側面を解明するために、高位の官職に就いたローマの貴族が残し一族の葬儀の時に持ち出されたと言われる「祖先の像(イマーゴー)」について、史料・文献を集めて幾つかの問題に関して考察を行った。考察の結果は論文の形にまとめており、研究誌に投稿の予定。 11月末から12月上旬にかけて2週間程ドイツのバイエルン国立図書館とローマのドイツ考古学研究所を訪れ、Bulletino della Commissione Archeologica Communale di Roma、Memorie drella Pontificia Accademia Romana di Archeologia、 Notizie degli Scavi di Antichitaなど考古学関係の研究誌のバックナンバーに目を通し、ラーウィーニウムを中心とするラティウムの諸都市の発掘報告・研究を集めた。併せて、上記「祖先の像」の研究に必要な研究書で日本では入手・閲覧が困難だったものについて、複写が可能な場合は必要箇所を複写し、不可能なものについてはノートを取った。今回のプロジェクトの基本史料であるリーウィウス『建国以来』の第2ペンターデ(第6〜10巻)を、平行史料にも目を配りつつ読み進めて第8巻の初めまで至った。リーウィウスの第2ペンターデに関しては、今回の研究成果を踏まえた翻訳により我が国の学界に寄与することを将来の目標として考えている。
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