今年度は、(1)古代の史書が伝えるローマ共和政中期の歴史を、史料批判研究の成果を踏まえつつ再検討する、(2)ローマ共和政期にラティウム・カンパーニア地方で行われていた宗教を考古学研究の成果を踏まえつつ考察するため、必要な資料・文献を収集する、(3)研究助成を受けている課題との関連で、ノービレース(ローマ共和政中・後期の支配者集団)支配をイデオロギー的側面から解明するために行ってきたイマーギネース・マヨールム(祖先のマスク)に関する研究を完成させる、の三つの作業を行った。 基本史料の研究では、昨年度より続けてきたリーウィウス『建国以来』の第2ペンターデ(第6〜10巻)の講読および平行史料との突き合わせの作業を10月で終え、これまでに収集した史料を先行研究を参照しつつ解釈する作業に移った。 10月末から10日間ほどローマに滞在し、ラーウィーニウムをはじめとするラティウムの幾つかの神域の発掘報告・これまでに収集した文献史料の解釈に必要な研究文献・ローマ共和政中期の宗教と政治に関する研究で未入手だった文献の閲覧・複写を、ドイツ考古学研究所で行った。同時に、ラーウィーニウムおよびその近郊で出土したいくつかの碑文について、実見に基づく調査を行って有益な知見を得た。 昨年度に研究助成を得てドイツ・イタリアを訪れた際に収集した文献を利用してイマーギネース・マヨールムに関する研究を進め、その一部を8月に完成させて研究誌に発表した。残りの部分も12月に完成し、別の研究誌に投稿を予定している。
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