研究概要 |
今年度は研究プロジェクトの最終年度に当たる。そこで当初、前4世紀の後半に実現したローマによるラティウムおよびカンパーニア北部地域の政治的統合に関する制度面からの研究と支配の正当化を目指したローマの宗教政策に関する研究について、過去2年間の成果を纏め今後の研究に見通しをつける計画を立てた。しかし宗教政策のまとめだけでかなりの時間を費やしたため、制度的側面は次年以降に回す結果となった。具体的な研究実績は以下のとおり。 1,ラーウィーニウムの神域に関する先行研究を整理し、文献史料の解釈に遺跡および碑文の研究で得られた知見を援用して、前4世紀後半を中心としたローマの宗教・イデオロギー政策を、主に二つの点から明らかにした。 (1)ローマの高等政務官が毎年就任に際して供犠を行ったと言われるラーウィーニウムのペナーテース神の祭儀、及びこの神とディオスクーロイ(双子神)との関係。 (2)前4世紀末にラーウィーニウムの南の神域の大規模な改修が行われた時、この神域内にあった土墳が霊廟に作り替えられたが、この霊廟とアエネーアス伝説との関係、及びアエネーアスと同一視されることもあるラーウィーニウムのインディゲス神の祭儀との関係。 これらの研究成果は、10月15〜18日に韓国の釜山大学で開かれた西洋古代史に関する日韓シンポジウムで報告した。更にこの報告のうち(1)の部分を論文形式にまとめ、Journal of Classical Studies(vol.14)に投稿した。 2,前4世紀の後半以降新たに再編されたローマの貴族層の性格をイマーギネース・マヨールム(祖先の面)の継承を手掛かりとして考察し、その結果を『史学雑誌』に発表した。
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