本年度の研究成果は以下の通りである。 1.ブルーニの共和主義的都市論はどこから由来しているか、中世の現実の都市の経験からなのか、古代の思想家の影響なのかを明確にする必要が出てきた。AristidesのPanathenaicosとの正確な比較をおこなったが、論文の公表に重要な先行研究のA.Santosuossoの論文の入手が遅れた。 2.更には、中世の都市論がどれほどこのルネサンス初期の都市論に反映しているかを分析・考察し、10月25日広島大学で開催した「イタリア学会」で、「中世イタリア都市国家の基本的形成原理-確かな「個」の確立か遠望の「くに」か-」というテーマで報告した。 3.13・4世紀のダンテ・ペトラルカやヴィラーニなどのこうした都市論・市民論に至る過程で、特にダンテを中心に研究してきた。ダンテの場合、先行研究の層ち厚く、都市論・市民論に限定する研究に集中した。 4.ブルーニ以後には中世都市共和政的な都市像や市民像の限界が露呈し、それを克服する形で登場するルネサンス的都市像や市民像の展望を「愛による統治」、「百合(純真な信仰)による統治」、「力による統治」として描けるのでないかという展望を得た。 5.岩波書店編集部より依頼されたR.RomanoのPaese Itala(1997)の翻訳作業も現在進行させている。
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