1、本年度には主として土器様式構造関係の資料を収集した。各地の遺跡の報告書から、本研究の目的に必要な情報を網羅的に収集した。特に研究上重要な資料については、所蔵・保管先に直接出向いて、実測図作成・写真撮影などの手段で記録化した。土器様式の研究は、遺物に関わる考古学的情報にのみ基づくのでは限界があるので、土器生産の具体的様相、土器様式の分布圏の意義付けを研究対象ととする諸学、すなわち文化人類学・民族学・歴史人類学などにおける研究の成果を、事例研究は当然として、特に方法論のレベルで勉強・摂取した。ただ単に、日本の当核期の事例と類似した他所の事例を場当り的に引くのでは意味がないからである。そのため基礎的文献・論文等を日本語・外国語を問わず広く複写集成して学習した。 2、本年度に収集した資料に基づいて、一つの土器様式の様式構造に反映される人間集団の価値体系、土器様式間の空間的関係の時間的変化、土器の伝播現象から伺われる集団間関係の変化とその原因についての分析を開始した。それらを、過去2カ年間に明らかにしてきた、集落や墓地の構造に反映される人間集団の編成原理とその変動と総合することによって、当該期の社会全体の構造変化や集団間の政治的・文化的関係の変化相を明らかにする見通しが立った。弥生時代後期から古墳時代初頭にかけて、社会の変化とりわけ階層化と地域的統合と信仰形態の変化が急速に進行したが、なぜその時期に生起し、そのような形を取ったのかを、前段階すなわち弥生時代社会が稲作農耕を主生業とする社会として安定して以来、後期後半に至るまでの内的要因・外的要因にまで遡ることによって解明する基礎作業となった。
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