本年度は、まず、研究史を整理しながら、琉球列島先史文化にみる南方的要素の抽出と比較検討の現状、問題点を検討すると同時に、環中国海地域の中で、東南中国を中心に先史文化研究の現況を整理しながら、当該地域の研究視点、方法の検討を行った。また、琉球列島、とくに先島地方を中心に、既存の遺跡発掘調査報告書から、遺跡に関する情報を抽出、整理を行い、関連遺跡の分布図等の作成を進めた。 これらの作業を行いながら、まず、12月3日より8日まで、國學院大學文学部加藤晋平教授をお招きし、琉球列島先史文化と環中国海地域の比較検討にあたっての分析方法に関する検討、及び琉球列島先史文化に見られる南方的要素及び環中国海地域に共通する文化要素の確認を目的に宮古、石垣に赴き、さらに沖縄県立埋蔵文化財センターにおいて県内出土資料の実見と意見交換を行った。とくに加藤教授が近年、提唱されている剥片石器群に関わる諸問題、香港、台湾の研究状況について検討した。 実地調査としては、再度、石垣市内の遺跡踏査を行った他、竹富島、波照間島(下田原遺跡他)、久米島(清水貝塚、大原貝塚、具志川相村北西海岸の遺跡他)を中心に、関連遺跡の踏査を行い、周辺地形の観察を通じて、遺跡の立地条件について検討を加えた。 また、琉球列島先史文化と還中国海地域を比較する上で、島嶼域における人間居住という視点が有効であると考えられることから、こうした視点で考古学研究を進めている関係研究者(国立民族学博物館他)と意見交換を行いながら、合わせて関連文献の確認を行った。これらを踏まえて、当該地域における考古学研究事例の再確認を行った。
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