本年度は、継続して沖縄考古学の中でとり上げられてきた南方的要素、大陸的な要素を抽出し、その研究状況と該当遺跡に関わる遺跡の情報を整理しながら、地域文化の比較にあたって、時系列の中での位置づけを検討した。また、各資料の中から生活技術的側面、社会的側面、精神的側面(世界観、思想、信仰、祭祀、儀礼)の3つの側面を抽出しながら、各資料の意味付けを検討した。 実地調査としては沖縄諸島の伊是名島、伊江島、渡名喜島、久米島に赴き、遺跡の立地状況の確認や関連情報の収集に努めた。また、中国考古学を専門とする上智大学名誉教授量博満氏を招き、具体的な資料を確認しながら、とくに中国周辺地域の考古学研究の課題や社会的、精神的側面に関わる考古資料の分析方法について検討を加えた。 そして、総括を行う上で、改めて比較研究にあたっての問題の所在を明らかにした。琉球列島をとりまく南の地域として東南中国と台湾に焦点をあてると、共通する研究テーマとして農耕を含めた生業形態を対象とした各地域文化の比較は重要であり、こうした生業形態の復元は、自然環境に対する適応のあり方を示し、技術的側面においては地域間交流の結果、技術移入が行われることもしばしばみられることである。そこで、具体的な研究テーマの一つとして農耕開始期をめぐる考古学上の諸問題について研究状況を整理した。 こうした本年度の研究内容に前2年間の成果を合わせて、総括として報告書の作成を行った。
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