中世史を見直すにあたり、今、最も注目されているのが都市研究である。これまで、中世史研究の主な対象は農民と武士であったが、中世の日本列島で活躍していたのは彼らだけではなく、商人や職人そして各地の都市的な場で生活していた人々でもあったことが多くの研究者によって指摘されてきている。本研究ではこのような中世史研究の現状を鑑み、山城国一揆の拠点の可能性もある普賢寺谷遺跡群の景観復原と、石清水八幡宮門前の空間分析を考古学とGISの複合的な研究によりおこなっている。 普賢寺谷遺跡群の景観復原では、昨年の調査結果をふまえ、そのなかでも本学京田辺キャンパスに所在する新宗谷館跡を中心としたデータ取得を重点的におこなった。 研究調査は、普賢寺谷遺跡群の景観復原に際してベースマップとなる、広域地形のデジタル測量データの取得にかかる研究と、新宗谷館跡地点に集中した遺跡の情報取得調査である。 このうち広域地形測量データについては、アジア航測に依頼して、京田辺キャンパスの開発に際して作成された測量図をデジタライズし、あわせてそのデータを加工閲覧し、その図面に各種歴史情報を追加できるソフトの開発を指導し、おこなった。このデータとソフトにより、新宗谷遺跡を中心とする普賢寺谷主要地区を景観復原する基盤データが整備されたことになる。来年度は後述する新宗谷館跡の遺跡清報もふくめた各種歴史情報をリンクしていきたい。 一方、新宗谷館跡の遺跡情報取得については、同遺跡を含む普賢寺谷一帯の調査が、今年度よりわたしの所属する本学歴史資料館の事業としてはじめられ、その試掘調査が歴史資料館としておこなわれたため、本研究ではその成果をうけて、調査後の資料整理をおこない、遺跡の情報取得につとめた。 石清水八幡宮門前の空間分析では、昨年度におこなった木津川河床遺跡の分布調査をふまえ、その結果を分析するための空間分析ソフトとして、GIOMEDIAとARC VIEWを導入し、その解析の準備を整えた。来年度は、このGISソフトを利用して、八幡市内遺跡データの解析を進め、石清水八幡宮門前の空間分析による都市構造の解明をおこないたい。
|