私は東北アジアの青銅器時代文化を総合的に研究するために、平成13〜15年度科学研究費補助金基盤研究(C)を利用して、中国東北地方を中心にフィールドワークを実施し、また韓国と日本における関連資料の調査と収集作業を行ってきた。これらの考古学資料を初歩的に整理、分析した結果、以下のような成果と今後の課題が挙げられる。 1、中国東北地方では既に新石器時代中期から環濠集落が出現し、青銅器時代を経て鉄器時代まで存続する。その間、朝鮮半島の青銅器時代文化と頻繁に交流し、また後者は弥生文化の形成に大きな影響を及ぼしたと考えられる。 2、東北アジアの集落形態において、集落を取り囲む環濠は欠かせないが、土塁は殆ど見当たらない。このような典型的な「環濠集落系」は黄河、長江流域の「城郭都市系」とは大きく異なる。 3、東北系(遼寧式)青銅器文化は恐らく紀元前12世紀頃、まず遼東地域から発生し、その後吉林、遼西、西北朝鮮に伝播して行ったと考えられる。 4、今後、中国東北地方を中心にして、土器をはじめとする遺物の型式分析と更に細かい編年作業が益々重要になってくると判断される。
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