本研究は、オセアニアの伝統土器文化を考古学、民族学、地質学の各資料を用いて総合的に研究することにある。本年度は時間的制約もあり、ミクロネシアおよびポリネシアの土器文化に関する文献資料を収集した。また、ミクロネシアにおいて、19世紀末から20世紀初頭にかけて撮影された土器作りの写真資料について、古写真資料や粘土サンプルなどを収集するためにミクロネシア西部への海外調査を実施した。 マリアナ諸島はオセアニアでもっとも早く17世にヨーロッパ文化と接触したため、文献資料にはまったくその伝統土器作りについては触れられたものがない。これは、あるいは土器作りの歴史がヨーロッパ人との接触時にはすでに喪失していたものとも考えられる。 ヤップでは非常に特異な土器作りを生み出したが、その背景にはヤップ島で利用できる粘土、およびそれに混ぜる混和材にあわせた技術的変化があったと考えられる。今回は、これまで採取してきた粘土サンプルに追加するサンプルの採取を行い、アメリカの地質学者へその鑑定を依頼している。 パラオの土器作りは、コイル巻き上げ式で、ヤップのものとはまったく異なる。むしろ、ニューギニアに見られる技術との類似が認められる。その背景には、良質の粘土の存在も無視できないと考えられる。 これら、歴史時代まで連続して行われた土器作り技術を記録した写真が、ドイツに保存されていることが期待されており、次年度はこれを発掘しにドイツへ調査に行く予定である。
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