古墳時代後期の階層構造を解明する研究の一つの方法として、古墳に副葬される副葬品組成の分析から後期古墳の階層性を追求しようとする試みが挙げられる。 筆者もこの見解に基づき、古墳に副葬される馬具の所有形態の類型(A類・B類・C類)と石室(玄室)規模の相関関係による検討、という独自の方法を用いて、後期古墳の階層性を解明しようと試みてきた。その結果、以下のような成果を得ることができた。 1.馬具所有形態の類型と石室(玄室)規模の関係には、A類→B類→C類の順で格差があり、馬具所有形態が劣るにつれ石室規模も縮小していくという相関性があり、これは被葬者の階層差に起因すること。 2.馬具所有形態の類型と石室規模の相関関係から、中央と周縁の関係について、(1)中央(畿内)の卓越性(2)周縁の多様性(西日本と東日本の様相の違い)(3)周縁における拠点的地域の存在を指摘した。 3.馬具のうち、特に轡(鏡板)の形態の違い、すなわち金銅装の鏡板付轡か鉄製の鏡板付轡かということに、古墳被葬者の階層性が反映される可能性が高いこと。 4.f字形鏡板と剣菱形杏葉の形態の比較を行い、同じ古墳から出土したものにおいては、f字形鏡板ではほぼ同形、剣菱形杏葉では同形のものと異なるものが認められた。また、異なる古墳出土のものに、ほぼ同形と見なせるものが存在した。
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