日本語方言境界線(気候線・関越線)による東アジア言語形成について、以下の新しい知見を得ると同時に、日本を含むインドからアジア・南太平洋を含む「モンスーン・アジア圏」という広域文化圏の存在を、初めて提示できた。 1(1)日本語方言の気候線・関越線をもつ分布を、それぞれ複数新たに指摘できた。 (2)境界線の歴史関係について気候線→関越線→糸魚川浜名湖線の順序が指摘できた。 (3)特に気候線は、朝鮮語・中国語での方言境界線、さらにインド西部までの言語境界線に連続している可能性が高いことを指摘できた。 (4)気候線・関越線がアジア言語の河川地形名・言語分布と関係することを指摘した。 (5)日本語の背景として「モンスーン・アジア」地域の広域言語層の存在を指摘できた。 2、朝鮮半島における方言境界線を指摘し、それが気候・文化の境界とも重なっていること、それらの境界と古代朝鮮の河川地形名の境界が一致することを確認できた。 3、中国大陸における方言境界線を確認し、それが気候・文化の境界とも重なっていること、それらの境界と中国の河川地形名の境界が一致することを確認できた。 4(1)「モンスーン・アジア」地域における広域河川地形名*nahdiの分布領域と「類別詞」の特異な分布領域が重複することを初めて指摘した。 (2)それら言語特徴と文化的諸現象の分布の重なりを指摘し、文化圏としての「モンスーン・アジア」圏が確認できた。 ◆新たな展開としては、接中辞や母音の円唇/非円唇性の分布がモンスーン・アジアを越えてアフリア・アラスカ付近まで確認でき、「モンゴロイド」の拡散過程とその言語展開史という文化人類学的視点でも、本研究の有効性発展性が確認できた。
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