本研究の当面の目標である「読本出版書目年表(予備版)」を作成するために、昨年度収集したデータの整理を踏まえて不足しているデータに関して調査を行い、分担者との今年度の調査計画を練り直した。今年度の調査日程関する綿密な打ち合わせの後、書誌データ記述方法についての検討を行った。その結果、所謂長編物の書誌記述に就いては大幅に予定していた項目数を減らすことにし、細かい諸板に関する記述は次年度以降の課題として継続的に行うことにした。 他方、前年度に引き続き個人蔵の資料に関しても調査とデータの収集を続けた。また国立国会図書館に蔵する資料等に就いても必要な標目に就いては紙焼写真の収拾などを行った。就中、印刷博物館蔵「鈴木徳三コレクション」に自筆稿本などが含まれていること、また八犬伝関連資料を収集している館山市立博物館の調査を行った結果、八犬伝抄録本の初板揃いが所蔵されていることが判明したのは特筆すべき成果であった。また、8月と11月には読本の一大コレクションが収められていることが知られていながら今まで調査が出来なかった広島大学付属図書館の読本250タイトル程の調査を実施し、デジタルカメラによる撮影と書誌調査を終えた。此処にしか所蔵されていない資料などもあったため貴重なデータが得られた。 今年度の調査から判明した新知見は少なくなく、まだ完壁な書目には程遠いと思われるが、取り敢えず『読本出版書目年表(予備版)」として報告書にまとめ、江湖の有識者に不備に関する教示を得ることにした。 なお、残された諸板研究については、本研究の目標を継続発展させる必要があるため、長期的研究計画に基づく科研費を新たに申請した。
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