この研究は、日本の中でも、特に岩手県遠野市を対象に行ったものである。遠野では、早くに、『遠野物語』が柳田国男によって書かれている。その後、遠野出身の佐々木喜善が、昔話を調査し、研究した。それは、日本においては最も早い出来事であった。しかし、佐々木が亡くなり、戦後になっても、それらは長い間顧みられることはなかった。やがて、遠野では、それらを貴重な文化遺産と考えるようになり、それらによって地域おこしを始めた。また、一方では、それまで知られていなかった昔話のすぐれた語り部が、観光の場で昔話を語り始め、その大切さを継承しはじめた。そうしたこともあって、図書館、博物館、研究所では、熱心に資料を集め、後継者の育成を考えてきた。今や遠野は、日本における昔話の資料と伝承を考える上での拠点になりつつある。
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