1、平安時代の「詩題」の関連資料をさらに広範囲にわたって精査した。今年度は、「詩題索引」の中の「漢詩と和歌」の比較対照項目を充実化するために、特に以下の二点についての研究を推し進めた。2、日本漢詩の特質を比較文学的に検証するため、中国・北京日本学研究センターにおいて、北京在住の日本学研究者と日本漢詩及び和歌の漢詩訳に関する共同討議を行った(平成13年12月19日〜26日)。この場で、和歌を漢詩に訳した伝菅原道真撰『新撰万葉集』と明代『日本考』所収の中国における最初の和歌の紹介(漢詩への翻訳)の事例を比較対照することにより、両者のそれぞれの特徴を明らかにすることができたが、とりわけ、『日本考』の表記(漢字音)が寧波の方言に基づくものであることが証明されたことは大きな成果であった。この問題は、さらに韓国(李氏朝鮮時代)の詩集『龍飛御天歌』にみる漢詩とハングル歌との翻訳に対する考察の必要性をも予測させるものであり、次年度での調査課題としたい。3、古代詩歌(漢詩・和歌)の研究には、東アジアの儒教文化圏内における「詩・歌」の概念を明確にしつつ、各国・各時代における共通性と偏差を知る必要があり、そのためには、「礼楽」ー「詩」・「歌」をその概念に含む中国古代の「楽」(音楽論)への深い理解が不可欠であり、そのために、国内外において関連の文献資料の調査・収集に努めた。 なお、今年度の具体的成果の公表は、内定通知が年度の後半期であったため(13年10月24日・追加内定)、さらに若干の時日を要するが、平安朝詩題に関するもの、及び漢詩と和歌の翻訳に関するもの、古代「楽」論に関するもの、その他の論文を作成中(一部公刊予定)である。
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