研究概要 |
平安時代の詩題に関する基礎的研究について、今年度は、前年度に引き続き、表記詩題の依拠資料(出典)の整備及び再検証を進めるとともに、在外研究の機会をも活用し、北京日本学研究センターを拠点として、題詠論を中心とした日本古典詩歌の日中(和漢)比較研究を行った。1,北京師範大学の蒋義喬氏の助力をえて、王朝詩歌の題詠論と中国古典詩の題詠及び題詠に関する詩論との比較対照研究を推進し、中国古代詩及び中国試論における題詠(句題詩)の成立過程とその詠法について新たな資料・知見を得ることができた。2,北京首都師範大学中国古典詩歌研究所の尹小林教授による古籍電子図書館『国学宝典』を駆使した典拠検索システムの和漢比較研究への応用を実地に試行し、王朝の詩題の特性を浮き彫りにする出典(材源)検索に大きな成果を収めることができた。3,また、「詩題年表」の記述に関わる、漢詩-和歌の和漢比較・対照研究については、(1)中国における日中(和漢)比較研究者との、日本古代和歌史上の勅撰集に関する共同討議を行い、特に、勅撰集編纂の根拠となる思想そのものは古代中国の儒教的礼楽観に由来するものの、中国本土においてはこうした思想的背景下の「詩歌集」の勅撰はかつて無く、日本の詩歌史特有の文学事象であることが改めて確認された。(2)中国における初めての和歌の翻訳資料を載せる明代編纂の『日本考』を対象に、その和歌・歌謡の表記と翻訳に関する言語学的及び比較文学的考察を行い、寧波出身の古典研究者の協力をも得て、和歌の翻訳方法と依拠資料の実態(書承でなく、当時の日本人からの聞き書きによること)等が判明した。4,以上の研究実績等をふまえ、その成果の部を『王朝詩題年表資料稿(仮称)』に取りまとめ、現在、そのデータ入力の最終的な点検・補綴作業を進めている(研究成果報告書に掲載予定)。
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