研究概要 |
「唐話辞書の発展・系統史の研究」の最終年度にあたり、3年間継続してきた基礎調査をまとめ、報告書『唐話辞書の発展・系統史の研究』を制作した。唐話辞書の書誌調査をふまえて、それぞれの資料解読を行い、辞書の性格と翻訳語彙を分析し、語彙の成立、社会言語としてもつ機能と役割の系統的位置づけを試みた。 1,未調査の唐話辞書の所在調査・書誌的調査を継続した。主として関西大学附属図書館の長澤文庫、国立公文書館、京都大学文学部図書館、長崎県立図書館、鹿児島大学附属図書館の唐話辞書を点検・調査した。 2、唐話辞書の言語系統的分類 唐話辞書の言語系統と翻訳語彙の分類は唐通事の出身地及び中国各地の方言(音韻)語法)を基準に次のように整理した。 A、南京語系・福州語系・〓州語系・泉州語系 B、異国系-暹羅・東京・モフル語系 3、唐通事の世襲制と諸家唐話辞書の家伝的性格について(魏龍山編『訳詞長短話』と魏氏文字など)は、貿易業務上のリストラなどの理由による事を報告した。 4、岡嶋冠山の編纂した『唐話纂要』等の辞書の性格について辞書の語彙や音韻から言語系統的分類を反映させた。 なお雨森芳洲の『音読要訣』は唐話と朝鮮語との修得法の相違を示唆した資料として比較検討し、唐話辞書の果たした役割や国語辞書に及ぼした影響について考察した。
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