本年度は、『常陸国風土記』と『万葉集』巻十六を中心に研究した。 『常陸国風土記』の文章構成の分析は、昨年度までに完了したので、それを受けて本年度は、周処『風土記』及びその他の六朝地誌類も含めて、『常陸国風土記』の表現に与えた影響を明らかにした。またそれと平行して、『万葉集』巻十六の題詞・左注の文章が何に学んだものかを明らかにした。 1.『常陸国風土記』と周処『風土記』及び六朝地誌類との影響関係の検討 守屋美都雄氏の先行研究を踏まえ、さらに諸文献から収集した佚文と、類書などから収集した六朝地誌類の佚文を基に、これが『常陸国風土記』に及ぼした影響を明らかにし、その結果を上智大学国文学論集21「常陸国風土記の文字表現(四)-美文への志向・六朝地誌類-」にまとめた。 2.今までに『常陸国風土記』に用いた方法を『万葉集』巻十六に適用し、巻十六の題詞・左注の表現が具体的に何に学び、誰によって達成されたものかを明らかにすることを日指し、第一に、助辞用法の考察・漢文としての誤用の考察・典拠の考察を行い、第二に、それを他の上代文献と比較対照し、誰の表現に類似するかを確認し、巻十六の題詞・左注の表現が東宮侍講によってなされた可能性高いことを明らかにした。その詳細は、2004年4月塙書房より刊行される万葉集研究に掲載予定である。
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