本年度は、古風土記全般について、その文字表現に見られる六朝文学・仏典についての影響を調査・考察した。 第一に、各国風土記の本文校訂を完成させ、電子テキストを作成した。『常陸国風土記』に関しては作成済みであったが、『豊後国風土記』『肥前国風土記』については「風土記研究」掲載の諸本集成により、『播磨国風土記』については、三条西家本(天理善本叢書)により、『出雲国風土記』については、『出雲国風土記諸本集』に校合の上、すべてに小学館新編全集本の頁・行情報を付与した。 第二に、これまで行っていた『常陸国風土記』の考察に加え、『播磨国風土記』『肥前国風土記』『豊後国風土記』『出雲国風土記』について新たに六朝文学・仏典についての影響を考察し、その文体的特徴を明らかにした。『出雲国風土記』については、各郡の前半部と後半部の文体の相違、漢籍語の有無の差があることを明らかにし、従来、各国から大宰府に提出した資料又は稿本に拠って大宰府で同一人が編纂撰定したと見られていた『肥前国風土記』『豊後国風土記』について、両書の文体的特徴によって、別人の手になる可能性が高いことを明らかになった。その成果については、上代文学会の第二期上代文学会研究叢書研究会「風土記の可能性を考える」第一回研究発表会(5月29日、学習院女子大学)において、口頭発表を行った。またその成果の一部は上智大学国文学科紀要第22号に発表した。
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